2016.12.01

つながり、つながる 中島菜穂写真展  ~終わりと始まり~

 古い友人から、「ぜひ見て欲しい」とある写真家の展覧会案内をもらった。いわゆる友人の友人というやつだ。
 

 明大前駅近く、高速道路の袂に佇むそのビルには小劇場やブックカフェなどが入っていた。鉄製の重い扉を開けると、人影は見えたが眼を合わせることなく写真を観はじめた。全く情報がないままで、作品だけと向き合いたかったからだ。ギャラリーは、3-4階の2つのフロアーをロフトのように存在感のある階段が繋ぎ、足元にはピアノが置かれ、壁は全てがまっ黒に塗られている。まるで、ニューヨークの雑居ビルの一室に迷い込んでしまったかのような感覚にとらわれた。


 作家の中島菜穂氏は、出版社の写真部で基本的な撮影技術を学び、後にフリーとなった。プライベートで作品を撮り続け、今回で5回目の個展開催となる。大きく伸ばされた作品もあり、とても見応えのある展示だ。そんな中、所々、作品と作品の間に詩のような言葉が添えられている。そのタイトルは、「誕生」、「つながり、つながる」、「気づけ。気づけ。自由の中の、抗えない不自由さに。」などであり、彼女自身に問いかけているようにも聞こえる。

 

 対象物となっているのは、光芒、 花唇の雨雫、天空舞う鳥など、国内外のスナップではあるが、やはり海外でのショットが目を引く。階段を上るとグアムのタモンビーチで撮影されたという写真のサイドに、突如、作家の祖母や姪のポートレイトが並ぶ。この写真を見た瞬間、渡辺澄晴さんと僕の共通の友人であり、片手に酸素ボンベを持ちながら撮影をし続けている写真家・岩崎勇氏の言葉が浮かんできた。「世界のあちこちまで出かけて行ったが、(中略)、身近なところに撮るべきものがあった...」。

 

 この展覧会は中島菜穂氏の実験である。2回目となる写真と詩のコラボレーション展示は、彼女が感じ想い続けることを言葉でなぞってみることによって、写真家としての葛藤、作品を生み出す苦悩とは何か明らかになったのではないだろうか。「葛藤こそが、真の芸術を生み出す」、僕はそう信じている。中島菜穂氏がこれからどんなものに眼を向け、それらとどう対峙するのか、ゲストブックに記された多くの中島ファンと共に楽しみにしたい。

© 2016 渡辺澄晴プロジェクト実行委員会

   Committee of Sumiharu Watanabe Project