1960年代の「ニューヨークの写真」を後世に

 

1960年代のニューヨーク ―最も熱きその時代― のネガフィルムを発掘

最新のレタッチ技術によって蘇る作品たち

写真家・渡辺澄晴氏(1928年/ 昭和3年生)が、1962-64年の2年間にニューヨークで撮影した写真を後世に残す為、ネガフィルムのデー タ化し、新たな写真集を出版する為、渡辺澄晴写真プロジェクトを立ち上げ、実現することになりました。

1962-64年撮影の写真は1965年に写真集になりましたが、現在では欧米のオークションで12万円もするなど入手困難です。

 50年が経ったいま、未公開作品も含めた新たな写真集を作り、アーカイブの構築と写真展を開催。未来の表現者へ、そして当時の生活を知る文化的史料としても活用が期待されます。​ 

▼プロジェクトを立ち上げた理由

 写真のフィルムは時間の経過と共に経年劣化があり、保存環境によっては使用出来なくなることがあります。渡辺氏の1962-64年における撮影は、もちろんデジタルカメラではありません。放っておけば劣化し、再びプリントすることが出来なくなってしまいます。しかも、写真集に掲載しきれなかった未発表作品、多くの後世に“残すべき写真”がネガの状態で埋もれたままなのです。

​これらの写真を、ネガフィルムのクオリティーを十分に引き出せる世界最高水準のヨーロッパ製のスキャナーによってデータ化したうえで、一コマずつレタッチャー(※1)による調整を行い、アーカイバルプリント(※2)や、印刷可能な状態にしたいのです。

​つまり、この貴重な作品をデータ化し、当時の生活を知ることができる史料として、

そして当時のニューヨークを写し撮った数少ない日本人写真家の作品として未来に残したいのです。

※1)レタッチャー…レタッチ(データ調整)を行う専門家

​※2)アーカイバルプリント…美術館収蔵など、恒久的に保存するための材料を使用したプリント。

▼写真集の制作について

1962-64年に撮影された写真の一部は『ワシントン広場の顔』として、すでに写真集になっています。しかし、この写真集は欧米のオークションなどに高額で出品されており、(NYのウエブサイトでは、1,200ドル/約12万円の価格がついているなど)現在は入手が難しい状況です。また、『ワシントン広場の顔』に収めきれなかった作品の中には、まだまだ貴重かつ素晴らしい作品が埋もれています。

50年が経過した今だからこそ、大きく意味を持つ作品もあります。これらを掬いあげ、後世に伝えるによりふさわしい充実した写真集を制作したいのです。制作には、数々の著名写真家の写真集を手がけてきた編集者の力を借ります。リメイクとも言えますが、新たな写真集と表現した方が良いのかも知れません。

▼1960年代のニューヨーク

この頃のニューヨークは、戦後の好景気を受けて大きく成長していった時代でした。ニューヨーク州の首都だけでなく、世界の、まさに「empire state」の首都へと花開いていったのです。

​また、自由主義、平和主義が叫ばれるなか、商業だけでなく、芸術の中心地として世界の芸術家を魅了しました。彼らは賃料が安かった倉庫街にアトリエを構え作品を制作したり、渡辺氏が通い詰めた「ワシントン広場」で、競ってパフォーマンスを繰り広げたりしていました。この街で、新しい芸術が生み出されていったのです。

​現在、MoMA / ニューヨーク近代美術館でも、実験的で学際的だった1960年代の芸術を紹介する展覧会「From the Collection:1960-1969」(〜2017.3.12)が開催されています。いかにこの時代の芸術が、熱をもっていたか、今の時代にも新たな発見を与えてくれるかが分かります。

渡辺氏について

渡辺氏は、1962-64年の2年間にわたりニューヨークを撮影し、多くの写真を残しました。現地で生活しながら撮ったそれらの写真は、当時を生きたニューヨーカーの息づかいや街の様子を生々しく伝えてくれます。氏は、1990年と2013年にもニューヨークを訪れて撮影を行っています。初版の1965年刊『ワシントン広場の顔』は、ニューヨークのアートショップで$1,200(約12万円)の価格がつくなど、入手が困難となっています。

渡辺澄晴(わたなべ すみはる):東京生まれ。株式会社ニコン在籍時、写真家・土門拳、木村伊兵衛、三木淳氏らと出会い、交流を続けるなかで、ニューヨーク滞在を機に本格的な作品制作を開始する。写真集に『ワシントン広場の顔』(1965年)、『ニューヨーク28年目の出会い』(1992年)などがある。  2013年にも再び『ワシントン広場の顔 1962-64/1990/2013』として新たな写真集を刊行。(社)日本写真作家協会名誉会長。

© 2016 渡辺澄晴プロジェクト実行委員会

   Committee of Sumiharu Watanabe Project