人生の先輩であると共に、友人のように交流させていただいている、広島を拠点に活動する写真家の工藤一義氏から、新たな写真集が届いた。

 氏は、一昨年、半世紀をかけて撮り続けた「厳島神社」を一冊にまとめたばかりだ。(ニューヨーク物語25 / 2015)

 

 今回、工藤氏は、広島県の財産である「原爆ドーム」「宮島厳島神社」のユネスコ登録20周年に際し、その意義を写真を通じて見つめ直し後世に伝えようという趣旨のもと、「世界文化遺産広島20周年記念写真展実行委員会」を立ち上げた。そこに、120名もの同志が集まり、写真集の発刊と3月、4月の写真展開催の運びとなった。

 

 写真集に同封された挨拶文の中で、

“「写真の力」で多少なりとも社会に貢献出来ることが、写真の価値観をより一層重んじていただけると確信しております。作品は会派の枠を超え...”と工藤氏は語っている。

 写真界は、いまなお複数の団体による個々の活動が中心だ。しかし社会の、世界の流れを見てもこれまで以上に横の繋がりや関連業種との交流が必要なことは間違いない。そうした中で、このような団体を超える活動は今後大きな意味を持つだろう。

 また、市民の記憶と記録を保存し未来へ継承しようという工藤氏の試み(アーカイブス化)は、大変意義のある行為だ。

 

 広島カープは25年ぶりの優勝を遂げた。僕は、高校時代から「広島カープ」ファンだ。とは言え、記憶にある野球観戦は、ニューヨークでのイチローの姿のみであり、カープ優勝の立役者、黒田投手がツーシームという直球の一種を得意としていることも最近になって知ったくらいだ。細かいルールもよくわからない。それでもファンだというのは、この球団が誕生した歴史にある。

 僕の母校には修学旅行というものがなく、代わりに学習旅行が行われていた。他にどの選択肢があったのかは記憶にないが、カープファンとしては迷わずこの地を選んだ。滞在中、被曝体験を語っていただくプログラムがあったのだが、その方が途中で体調を崩して倒れてしまうという出来事が起こった。

 あの日、原爆ドームの前に佇んだ時、復興を目指しカープに声援を送り続けきた市民の声が聞こえるような気がした。そして、一度だけシャッターを切った。その写真を高校の卒業アルバムに大きく載せた。

 

 「世界文化遺産 広島20周年記念写真集 1996-2016 」には、120名130点余りの作品が収録されている。中でも、工藤氏の「訴える」は、迫力ある一枚だ。原爆ドーム前での、日本全国を旅しながら油画や廃材を用いた作品を制作しているとされる放浪画家・藤川初則氏の直球とも言うべき無言の叫びを、写真家・工藤一義は体当たりで受け止めにいったのだ。 

 

世界文化遺産 広島20周年記念写真展

3月7日(火)〜 3月12日(日) 広島県立美術館

4月5日(水)〜 4月9日(日)  はつかいち美術ギャラリー(宮島厳島神社)

4月25日(火)〜 4月30日(日)旧日銀ギャラリー(原爆ドーム)

 

この写真集は、中国地方五県の市町村の図書館(約200館)と公立、私立高校へも寄贈される。

 

2017.2.25

ニューヨーク物語31 棚井文雄

​直球

ニューヨーク物語 

プロジェクトオーナーの写真家・棚井文雄氏が、2011年から  (社)日本写真作家協会広報誌に掲載してきました「ニューヨーク物語」を当サイトで引き続き連載いたします。

​- 2017 -

© 2016 渡辺澄晴プロジェクト実行委員会

   Committee of Sumiharu Watanabe Project